永遠の『永』には漢字の主な構成要素である八つの止め跳ね等が一文字に含まれており、「永字八法」と呼ばれる『永』の字の反復練習法がお習字の基礎として普及している。
半紙に潜って永字を練習、繰り返し繰り返し、筆を動かし続けていると身体(手首、或いは肘、腕の関節)に沿って、文字の止め跳ねがフラクタルを描きながら螺旋は螺旋で構成され続け、半紙に現れる造形は動植物のようで、巻き貝のフィボナッチ数列(彼女はいつも全力で、1と2を知ったら3、2と3を知ったら5と、非可逆性の積極が美しい。)、粘菌、水や大気の動きのようにも見えてきた。太陽系と永遠の概念と原始人とお揃いの螺旋。
すると半紙からお風呂場にまで永字が流れていって、排水溝に流れる水と永遠が重なった。吸い込まれているのか、湧き出ているのか解らなかった。
辞書曰く『永』の字の語源は水が合流して勢いよく流れるところを表した字。
人口的な渦巻き模様が世界中で見られるのは、物質の螺旋形共通と、それの視覚的神秘性があるが、単に力を抜いた手首の動きなのではないかと思ったことがある。
習字とは規律だ。だけど有機な私たちは有機に向かって『ただいま、今夜は一緒にねむろう』と、起こされてすこし怪訝そうな有機(いつも勝手な事ばかり言ってごめん)を尻目に半紙に潜り込みつつ、そう言ってみたいこともある。
(紙には少しの保温性が。)
反復と、螺旋と